
AIが「動かない」本当の理由と「プロンプト神話」の誤解
大規模言語モデル(LLM)の導入は業務効率を劇的に変えましたが
「AIに調べさせたのに情報が古い」
「期待した成果が出ない」といった声も聞かれます。
この「AIが動かない現象」の根源には
「AIの情報源の仕組みの限界」と
「プロンプトは魔法の言葉だ」という根本的な誤解があります。
特に「プロンプトを買えば稼げる」「〇〇式プロンプトがあれば万能」といった
情報に頼ると、AIの仕組みへの理解が深まらず
現場での創造性や判断力が弱体化します。
AIは考える人を支える道具であり
「考えない人間」を量産するためのものではありません。
本記事では、AIの仕組み的な限界を解説しつつ
なぜ「テンプレート」が機能しないのかを明確にし
あなたの仕事の経験や断片的な思考を
「動き出すプロンプト」に変える具体的な発想法を提示します。
技術的な制約:AIはネットの「どこまで」を見ているのか?
AIの出力が古い、または浅いと感じる場合
それはAIがアクセスできる情報が構造的に制限されているためです。
AIは、あなたが期待するような
「自由なネットサーフィン」をしているわけではありません。
記憶の図書館:過去データという根源的な限界
多くの生成AIは回答の基本として
あらかじめ学習して覚えている過去の膨大なテキストデータに依存しています。
特定のAIの学習データがカットオフされている場合
それ以降に更新された最新情報(ニュースやトレンド)は
基本的には「知らない」状態です。
AIはリアルタイムでネットを監視しているわけではなく
「過去の記憶の図書館」をもとに話していると理解する必要があります。
Webブラウジング機能と「地図の外」の制約
リアルタイムの情報を扱う「Webブラウジング機能」も
下記の制約から万能ではありません。
検索エンジンを経由して公開ページを読み取るため
ログインが必要なサイト、非公開資料、有料コンテンツは見られません。
AIが情報を取得できるかは
そのページが検索エンジンのインデックス(地図)に
登録されているかに依存します。
検索エンジンがまだ巡回(クロール)していないページは、AIの視界に入りません。

AIが「調べてくれない」とき、それはAIが怠けているのではなく
あなたの問いが「地図の外」を指しているか
「記憶の期限切れ」にある可能性が高いのです。
思考の設計:なぜ「魔法のプロンプト」より「構造」が重要か?
AIが動かない、期待通りの成果が出ない最大の原因は
「プロンプトは魔法の言葉だ」という誤解と
「構造を理解する力」の不足にあります。
①「プロンプトを買えば稼げる」という錯覚
AIの出力は「言葉の確率」で動く仕組みであり
「どんな文を入力したか」という表面的なテンプレートよりも
「なぜその指示をしたのか」が成果を左右します。
プロンプトの本質は魔法ではなく、設計図です。
同じテンプレートを使っても、目的も前提も違えば結果はズレてしまいます。
必要なのは、『なぜ』『誰のために』『何を』『どんな状態にするのか(したいのか)』
『求めるアウトプットの形はどんなものか』
アウトプットのための制限やルールを言語化する力が求められます。
それが、AIに思うように動いてもらうための第一歩です。
②設計図の細かさで変わるアウトプット
漠然とした問い、たとえば「余っている豆腐とキャベツで、簡単で美味しいおかずを教えて」では、
AIが意図を理解しきれず
「味噌汁・野菜炒め・冷奴」という一般的な答えしか返せません。

設計された問いをすることで
具体的な行動に繋がる、質の高いアウトプットも出会えます。
例:
【問い】
「豆腐とキャベツで、10分以内に作れて、洗い物が少なく、子どもも食べられる、中華風の副菜を教えて」
↓
【結果】「豆腐とキャベツのとろみあん炒め」
などのような
③プロンプトが浮かばない時の7つのアプローチ
AI活用に必要なのは「〇〇式」のテンプレートではなく
「思考の断片」を「動き出すプロンプト」に変える発想の技術です。
プロンプトが出ない時こそ、AIを「まとめ役」ではなく「聞き役」として使い
思考を整理することがおススメです。
私は以下のような、7つのやり方を普段取り入れてます。
①「問い化」テンプレートで整理する
思考の断片を、AIが動ける「問い」に変えるだけでプロンプトが生まれます。
「〇〇について考えているが、まだ整理できていない。整理するためにどんな切り口がある?」
「この考えを企画案にするなら、どんな観点を補うべき?」
②音声入力と「質問生成」の活用
口頭で話した内容をAIに書き起こさせ
さらに「この書き起こしをもとに、私が考えを整理できるように3つ質問を出して」と依頼します。
AIが返す「意図」「背景」「目的」に沿った質問が
次のプロンプトの材料になります。
③「未整理メモ」を素材として再構成させる
プロンプトが出ないときほど
自分の断片をAIに再編集させると発想が出ます。
「以下は断片的なメモです。これをもとに、構造化した3つのテーマに分けてください。」
「文章化できていないこの考えを、ブログ/講座企画の仮タイトルにして。」
④「役割」から発想する
「自分が何をしたいか」ではなく
「AIにどんな役をやらせたいか」から出発します。
「編集者としてまとめて」
「弁理士の視点で意見して」
「教材設計者として構成を組んで」 役割を変えることで、
質問も出力も変わり、自然に新しいプロンプトが浮かびます。
⑤ 「3つのP」から思考を引き出す
プロンプトが浮かばない時は「People/Problem/Purpose」で整理し、AIに渡します。
People: 誰のためか?
Problem: どんな課題か?
Purpose: なぜ考えたいか?
AIはこれを元に
「次に書くべき構成案」や「質問リスト」を返してくれます。
⑥「過去の自分」か「他人」を代入する
自分事を他者視点に変換するだけで、AIが答えるべき問いが浮かびます。
「過去の自分(または顧客)がこのテーマで悩んでいたら、どんな質問をする?」
「この内容を生徒に説明するなら、どんな順番がわかりやすい?」
⑦プロンプト支援の「定型フォーム」を作る
習慣化したい場合、GoogleドキュメントやNotionなどで以下のようなフォームを作ると便利です。
入力を埋めるだけで「プロンプト未満の素材」が整い、自然にAIが動かせます。
| 項目 | 入力例 |
|---|---|
| 今日考えているテーマ | 講座の第2章構成 |
| 今の気持ち | 方向性が決まらず停滞気味 |
| 期待するAIの役割 | 一緒に論点整理してほしい |
| 出力形式 | 箇条書き/見出し/章立て など |
販促プランナー/マーケター
小売業やメーカーでの経験を活かし、販促企画・広報・デザインの支援を行っています。
2010年に個人事業として独立し、2018年に法人化。外国人販売員研修や販売促進支援を展開してきました。
現在は「ツヅケルマーケティング®」を軸に、
中小企業が“売れ続け・選ばれ続ける”仕組みづくりを伴走型でサポートしています。
「動けない」を「やってみよう」に変えるヒントを、このブログで発信しています。





